ごあいさつ

 いろいろなライフステージ(年齢)で、生きにくい社会になってしまったのかもしれません。誰だって、山あり谷あり。スランプを経験したことのない人はいないでしょう。
 精神科領域の疾患は、身体科(内科や外科)のように病気の原因が、今日の脳科学をもってしても、いまだに解明されていません。
 精神科の診断一つとってみても、医師によって異なったり、病気の経過によって見え方が違ったりすることもあります。
 しかし患者さんを前に、そんな弱気で嘆いてはいられません。
 診断は、精神病のレッテル貼りでなく、これからの治療戦略のたたき台、暫定的なものであることもあります。
 人のこころには自然回復力があり、それを活性化させることが上等で、薬も必要最小量で最短で最大限の効果が出るように、また治療は終わるわけですが、終わった後の病の再燃・再発が少なくなるような治療(スケジュール)を提供できればと思っています。

 人は若い時は、人生経験が短く、思春期もあって、自己の矛盾で頭がいっぱいになったり、つまずいた時にこの辛さが一生続くのかと悲観的になったりしがちです。でも、若いとはエネルギーに満ち溢れ、これから先の可能性は広く、楽しみもまだたくさん残っているはずです。もし、とてもそう考えられないのであれば、こころが委縮しているのでしょう、誰も信じられなくなった時は、場合によっては休養も必要かもしれません。とかく足踏み状態は無駄と考えがちですが、焦ったり辛いけれど決して無駄な経験にはなりません。どうも、人生というのは直線的にたどるものではなく、まわり道したり道草をくったりがあって当たり前、ジグザグに進んでいくもののようです。
 若い時には背伸びしないほうがいい、立派である必要はありません。
人の一生分の幸せは、ほぼ同量であると思っていた方がいい。
 こういう時代だからこそ、泣き笑いでもいいから明るく、楽天的に考えていた方がいい。
 時流が速いからこそ、疲れ切らないよう留意して、細く長く進んでいったほうがいい。 そう思います。

院長
野村和広
日本精神神経学会認定精神科専門医・指導医
精神保健指定医
医学博士(浜松医科大学)